ソーシャルエンタメ的事例の第二回目、Case File#2として取り上げるのは、個人的にも「あまロス」中、「NHK連続テレビ小説「あまちゃん」」について。
あまちゃんが最終回を迎え、あまロス症候群(あまちゃんが終わってしまって寂しいよ~症候群)を抱えている方もいるのではないでしょうか。あの小ネタ効かせ方、伏線の張り方、テンポの良さ、キャラクター設定、小気味よく反復される映像と対比の映像、などなどなど、どれをとっても最高でした。作品の魅力自体については、いろいろなところで語られているので、ここではあくまでソーシャルエンタメ的な見地から分析していきましょう。
今さら言うまでもありませんが、「NHK連続ドラマ小説「あまちゃん」」は、NHKで 2013年4月1日から9月28日の26週にわたり全156回放映されたドラマです。 ソーシャルエンタメ的には、 Case File#1 で取り上げた 「プラチナデータ」 のような Twitterの公式アカウントはなく、また、Facebookの公式アカウントもありません。
ハッシュタグをコントロールし、コミュニティの中心となるような公式アカウントは存在していなかったにもかかわらず、Twitter 上では 「#あまちゃん」というハッシュタグを介したコミュニティが自然発生的に形成され、その「#あまちゃん」コミュニティはほぼ毎日、ほぼ24時間、途切れることなく継続し続けたのでした。 放送当時の勢いはもう見られないですが、おそらく、ドラマが終わってしまった今でも 「#あまちゃん」コミュニティは継続し続けているに違いありません。 (Twitterの 「#あまちゃん」 の検索、 試しにこのリンクからどうぞ!)
なぜ 「#あまちゃん」コミュニティがほぼ毎日、ほぼ24時間、途切れることなく継続し続けたのか。
その大きな理由のひとつとしては、「NHK連続ドラマ」の持つ下記の3点の特色があげられるでしょう。
<<NHK連続ドラマの最大の特色>>
- 月曜から土曜まで毎日連続して放送される
- BSも含め、一日に4回放送される
- 土曜日には1週間6回分がまとめて放送される
表に表すとこんな感じ ↓↓↓
チャンネル | 曜日 | 時間 | 略語 | Note |
BSプレミアム | 月~土 | 7:30 - 7:45 | 早あま | |
NHK総合 | 月~土 | 8:00 - 8:15 | 本あま(朝あま) | |
NHK総合 | 月~土 | 12:45 - 13:00 | 昼あま | |
BSプレミアム | 月~土 | 23:00 - 23:15 | 夜あま | |
BSプレミアム | 土 | 9:30 - 11:00 | 週あま | 1週間6回分をまとめて放送 |
「日曜を除く連日放送」というだけでなく、デジタル放送かBS放送のどちらかで、「ほぼ毎日、同じドラマが4回放送」されているというこの大きな特色、NHKならではの贅沢な連続振りです。 「NHK連続ドラマ」は一般的に朝ドラと呼ばれてますが、実際の放送時間は、上の表1のように、朝二回、昼一回、夜中近くに一回 となっており、実質的には「朝」だけではないのです。 見ようと思えば、朝昼夜のどれかはどうにか見ることができるし、一回につき15分なので割と気軽に見ることができる。しかも、見逃した人のために、土曜の午前中に一気に一週間分まとめて見れるという、それはそれは親切な仕組みです。
Twitter上であまちゃんの話題が、途切れなく続いていたというのは、こういった、何度も同じ内容のドラマが放送されており、 「#あまちゃん」コミュニティに入るきっかけが複数存在した、ということが大きな理由の一つといえるでしょう。
表1の「略語」の欄に書かれている「xあま」という記号は、Twitter上でそれぞれの放送時間帯を何と呼ぶのかを記しています。 早朝の時間帯は「早あま」、いわゆるNHK総合朝ドラの時間帯は「本あま」あるいは「朝あま」、お昼の放送は「昼あま」、夜は「夜あま」、土曜日のまとめ放送は「週あま」とそれぞれ略して呼びます。そして、表上にはありませんが、録画したものについては「録あま」と略します。
140文字という制限のあるTwitterでは、長いドラマ名を略して呼ぶことが多いですが、連ドラでは3文字でどの時間帯の放送かもわかるように略すのが慣習となっているようです。使用例としては、以下のような感じでしょうか。
- 出勤前の早あま待機。
- 今日は、早あま、本あま、昼あま、と3回もあまちゃんを見てしまった、、、
このように連ドラのドラマ名を、放送時間帯を区別して3文字で略す呼び方は、いつごろ始まったかというと、2010年に放送されていた「ゲゲゲの女房」が最初と言えるでしょう。 「朝ゲ」、「昼ゲ」、「夜ゲ」、「録ゲ」、この言葉を聞くと懐かしく思う方もいるのではないでしょうか。「ゲゲゲの女房」のときも、「#gegege」コミュニティが、ほぼ毎日、ほぼ24時間、途切れることなく継続し続けたものです。そして放送が最終回を迎えたときは、ゲゲロス症候群になってTwitter上をさまよっている方が大勢みられました。今日のTwitter上の「あまちゃん」現象は、「ゲゲゲの女房」の時に見られた現象とほぼ類似しているといえるでしょう。
すなわち、
Twitter上に自然発生的に連ドラのコミュニティが形成されるという現象は、「ゲゲゲの女房」から始まった
のでした。
(因みに、「ゲゲゲの女房」と「あまちゃん」の間には、「てっぱん」「おひさま」「カーネーション」「梅ちゃん先生」「純と愛」と続きましたが、この5つの朝ドラに3文字略語があったかどうかは未確認です。少なくとも筆者のTL上では確認されていません。知っている方がいらっしゃいましたらコメントしていただけると幸いです。)
Case File#2 #あまちゃん #あま絵 #あまロス 【2】 に続く
次回も引き続き、「#あまちゃん」の分析を行っていきます。
それにしても、「あまちゃん」では主人公、天野あきちゃんのキャラクター設定はもちろんですが、脇役のキャラクター設定がすばらしかったですよね。強烈過ぎたあま軍団もさることながら、男性の描き方がとても上手いと感じました。ストーブさん、ミズタク、ずぶん先輩、3人とも普通ならイケメンなはずなのに、どこかしらに残念な部分を存在させるというキャラ設定。若手もそうですが、べんさん、大吉さん、あきちゃんパパ、忠兵衛さん、大将、太巻、ヒビキ、ベテラン勢もキャラが立っていて、それぞれが見どころがあり、キャラに重なっているところが全くなかたったでした。そして、なにより忘れられないのが、ほんの一回(二回?)の出番のみで話題騒然の、前髪クネ男!
このような緻密で凝ったキャラクター設定が、あまちゃん人気を支えていたのでしょう!
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